サマーウォーズ、時をかける少女、バケモノの子などの名作を手がけてきた細田守監督。
私も中学生のときにサマーウォーズを一人でみて、感動で大号泣しました。そんな方も多いのではないでしょうか。
金曜ロードショーで細田守監督の「未来のミライ」が公開されていたので見てみることにしました。結論は面白くありませんでした! 前作までの期待はどこに……。
ただ、考察を妻に話すと「考察を聞くと面白いと思った」と言っていたので記事にしたいと思います。
前評判「親だと楽しめる」「作中の親はひどい」というのはそのとーり!
前評判を聞いていたところでは、なんとなく「親は面白く観れる」「作中の親はひどい人物だ」とか、主人公のくんちゃんの声優がひどいとか、それはそのとーり! 正直親以外は「?」という感じの作品だと思います。
親のきもちになって見ることをおすすめします。
「未来のミライ」のあらすじ・ネタバレ
お父さんお母さんの元には飼い犬と主人公のくんちゃん。デザイナーの親が建てたステキなお家で愛されて生活を送っています。
そこに突然現れたのは妹のミライちゃん。それまで親の愛情を独り占めしてきたくんちゃんは「妹のミライちゃんなんて嫌い」と、妹をいじめたり、嫉妬に歪みます。
嫉妬に狂い、妹をいじめているくんちゃんは突然、家の中に知らない人が現れたり、家の中が知らない世界に変わっていたりという不思議な光景を目の当たりにすることになります。
想像の世界ではポスターにも載っている制服姿のミライちゃんが登場。タイトルどおり「未来の」ミライちゃんとともに過ごす中で、くんちゃんが成長していく姿を描く作品になっています。
ハートフルな雰囲気の作品だが、どうも私は「は?」「誰向け?」という気もちが強くて見るのが大変でした。
(くんちゃん周りの描写は子ども向けに見える一方で、どう見ても大人向けの表現が多い。演出や心理描写は感動的・面白いと感じる部分があるものの物語はチープだなと思ってしまう)
こういうときに、ウォルトディズニーが語った「アニメは子ども向けに作ってはいけない。大人が楽しめる作品にすることが大切なんだ。それは親が財布を握っているんだから、親も一緒に見れるようにしないといけないからだ」というエピソードを思い出します。
子どもはいつの間にか育っている|映画「未来のミライ」の感想・考察①
そんな「未来のミライ」考察ですが、主題は「子どもはいつのまにか勝手に育っている」っていうことだと思います。
父親が言う「子供ってすごいなあ。誰に教わるわけでもなく、勝手に成長してる」この一言に、細田守監督が描きたかった思いが込められていると感じました。
空想の世界は「血」「遺伝」の象徴
くんちゃんの空想世界には【飼い犬、ミライちゃん、ひいおじいちゃん、未来の自分】などが現れます。おそらくそれは「血筋」や「遺伝」の象徴だと思います。
・妹に嫉妬していたくんちゃんが、兄である自覚をして雛人形を片付けてあげる(兄の自覚をするという描写)
・誰に教わるでもなく、ひとりでに自転車に乗れるようになる(おじいちゃんの影響を受けているという描写)
細田守監督自身が子育てをする中で実感した「子どもって親に教わるだけではなくて、祖先の影響や妹の存在を受けて自然に成長していくんだな…」ということを表現したい映画だったと思います。
(この考察を聞いた妻が「すこし作品が面白くなった気がする」と言っていました。多分、上記は親なら感じたことがあるけど、親じゃないと全く知らない感覚だから共感できない作品なんだと思います。作中の親目線で共感できる作品だったら、親以外も楽しめた気がします)
未来のくんちゃんに会い、電車に乗るシーンの考察
もう一つ、くんちゃんが未来の自分に出会ってから電車に乗り込むシーン。細田守監督の巧みな演出で盛り上がるシーンだが、ここが怖すぎる。
電車に乗って到着したターミナル駅。駅の迷子案内所を訪れるくんちゃん。駅員に迷子と話すと「自分自身をなくしたのですね」とこわい一言。
「保護者は?」と聞かれるが、くんちゃんは母親、父親の名前がわからない。自分を証明するものはなに? 悩んだ挙句に「ひとりぼっち行き」の新幹線に強制収容させられる。
暗い、えぐい演出に恐怖……急に落としすぎ……。いきなり現れた赤ちゃんのミライちゃん。くんちゃんはミライちゃんを守るために立ち上がると、未来のミライちゃんが現れてくんちゃんを救う。
妹への嫉妬で失った自尊心を、ひとりでに取り戻す
妹への嫉妬、両親からの塩対応で自尊心を失いかけてたくんちゃんは、闇新幹線に強制的に乗せられます。このまま行くと闇落ち…というところで妹を救うために立ち上がる様子はまさに自意識を乗り越えて、妹を守ることでひとりでに自尊心を取り戻すのです。
細田守監督が描きたかったのはシンプルに「子どもって勝手に育つ」ということを言いたかったんだと思う。(この考えに共感しない親と、子育てをしたことがない人は★1をつけているはず)
ひとりの親としての細田守監督|映画「未来のミライ」の感想・考察②
この作品の面白さは「子どもがひとりでに成長する不思議」だと思います。それは親になった細田守監督だからこそ描けたものだと思います。
一方でこの作品のつまらなさも同時に「親としての細田守監督が描きたいものがこれまでの作品のターゲットと違う」からだと思いました。
子どもができたらもう一度見てみよう。面白くなるかもしれない。
親はどうぞ。
photo:(C)2018 スタジオ地図
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