漫画「海街diary」を読んでいたら、映画「海街diary」もどういう作品か気になって見ることに。結論からいうと原作の再現度は低く、魅力は薄れていたかなと言う印象でした。
とはいえ原作を薄れさせたからこそ、映画としては見やすくなっていたので映画「海街diary」について紹介します。
今回もくらしのワルツらしく、ポイントで見どころ・気になりどころを紹介した上で、最後にあらすじ・ネタバレありの考察・感想を書きたいと思います。
原作を”利用”した映画|映画「海街diary」の感想・考察①
この映画を見た最大の感想は「原作を利用した映画」ということ。映画単体の魅力はさておき、漫画寄りのわたしにとっては「原作の魅力は出てない」「他の作品になった」と感じました。
昨今の漫画原作映画は、漫画の原作の魅力を引き出しつつ、映画としても面白い作品が増えていると思います。例えば「銀魂」「ザ・ファブル」とか。あとは海外でもディズニーの実写映画「アラジン」「美女と野獣」はとてもいい映画です。
原作を再現してほしいのではなく「原作にリスペクトを持ってほしい」と感じるのはファンのエゴではないと思うんです。人の作品を踏み台にして別の作品をつくるなら、原作を使わずにオリジナルをつくったほうがいいと思うんです。
この映画を見ていたときに全体に感じたのはこの印象でした。もちろん、原作を再現しているシーンもありますが、全体として感じたのは「利用しているな…」でした。
綾瀬はるかさん、長澤まさみさん、夏帆さん、広瀬すずさんという人気女優4人を配役したのも、長澤まさみさん、広瀬すずさんはともかく。綾瀬はるかさんと夏帆さんのミスマッチ感が強すぎてとても見ていられませんでした。「海街diary」の原作が4人姉妹だった設定を利用したかったんだなと思いました。
漫画「海街diary」はもっと超絶に暗い。是枝監督の信条とのミスマッチ|映画「海街diary」の感想・考察②
映画「海街diary」は是枝監督がつくっていますが、是枝監督は信条的に「誰も悪者に見えない映画をつくりたい」と言っているのですが、それが原作の漫画「海街diary」ととても相性が悪いです笑
漫画「海街diary」は、人の醜さ、弱さ、現実に起こる悲しみ、苦しみなどを中心に描いています。そこには、必然的に「悪者」が多く存在しますし、その醜さ・恨み・辛みも人間らしさであり、愛おしさだと感じさせてくれる漫画です。
他の記事でも書いていますが、普通の作品って「1回暗いイベントを起こしたら1回救いを入れる」感じで中和する作品が多いと思うのですが、吉田秋生さん原作の漫画「海街diary」は「10回暗いイベントを起こして、1回救いを入れる」という全然救われない系漫画です。
もう暗すぎて嫌な気もちになるんですが、激辛カレーと同じで食べてるうちに癖になって、次のひとくちを食べたくなる。そういう作品なんです。
それが、この映画は普通寄りで「1回暗いイベントを起こして、2回救う」みたいな。そこって作品のコアだと思うんです。コアはぶらさないでほしかったです。少なくとも漫画を読んだ直後に映画を見た私はそう感じざるを得ませんでした。ぜひ漫画も読んでみてください。(映画よかった人は、Amazonではバッドレビューを書いている人が多いです笑)
長澤まさみさん、大竹しのぶさん、樹木希林さんの演技上手い…|映画「海街diary」の感想・考察③
原作との違いについて語りましたが、一方で映画としては面白いと思いました。
その中でも、長澤まさみさん、大竹しのぶさん、樹木希林さんの演技は見ごたえがありました。
私がこの映画を見ていたときに残念だったのは、作品の主軸たる4人姉妹が原作と乖離していたことです。先にもあげたとおり、綾瀬はるかさんと夏帆さんは全然原作と違う。。広瀬すずさんは惜しいが違う。しかし、長澤まさみさんはめっちゃ”佳乃”でした。
思うに、4人姉妹の中で原作を読んだのは長澤まさみさんだけだったのかなと。あるいは長澤まさみさんが圧倒的に演技上手いとか、役にハマってたとか…理由はわかりませんが、とにかく長澤まさみさんは役にハマっていたと思いました。
あとは4人姉妹(のうちすず以外)の母親役である大竹しのぶさんと、大叔母役の樹木希林さんは原作を読んでいるかどうかわかりませんが、演技がうまくて成立していました。原作との乖離はあったように思いますが、演技うますぎて成立。役者さんってすごいです。
鎌倉のPRは絶妙|映画「海街diary」の感想・考察④
しらす、鎌倉の海、鎌倉の町並みなど、鎌倉の魅力を存分に使っています。これは原作もそうだけど、けっこういい表現だなと思いました。こういうところを映画にしたいという気持ちはわかります。
映画「海街diary」のあらすじ。
鎌倉で3人の姉妹が暮らしていたところに父親の訃報を聞く。姉妹が幼い頃に家を出た父親は、東北は山形に住んでいた。
葬式のために山形に行った”3姉妹”は、そこですずと初めて会う。愛着のない山形で、しかも父親の腹違いの妹に対して一緒に暮らさないか、声をかける”3姉妹”。
直後、即OK回答で鎌倉で暮らすことにするすず。
そして4姉妹が鎌倉でクラス中で、さまざまな出会い、別れ、人間模様の複雑さを感じながら生きていく物語です。
漫画「海街diary」を読み切ったからこそ、この映画の原作を利用した感じ、原作再現の悪さに目がついてしまいましたが、映画単体で見ていたら、それはそれで清々しい爽やかな作品になっていたと思います。
あと、是枝監督の作品は他のを見たことがなかったので、ちょっと反省。「歩いても歩いても」「誰も知らない」「そして父になる」「万引き家族」なども見てみようと思います。
映画「海街diary」の製作・概要
2015年製作/126分/G/日本
配給:東宝、ギャガ
制作陣
監督:是枝裕和
原作:吉田秋生
脚本:是枝裕和
キャスト
香田幸:綾瀬はるか
香田佳乃:長澤まさみ
香田千佳:夏帆
浅野すず:広瀬すず
坂下美海:加瀬亮
平井上泰之:鈴木亮平
浜田三蔵:池田貴史
藤井朋章:坂口健太郎
尾崎風太:前田旺志郎
高野日出子:キムラ緑子
菊池史代:樹木希林
福田仙一:リリー・フランキー
二ノ宮さち子:風吹ジュン
椎名和也:堤真一
佐々木都:大竹しのぶ
出典:漫画「海街diary」
出典:映画「海街diary」
画像:(C)2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ
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