プロローグ|保険探偵ホームズ〜100%推理を外さない名探偵〜

小説

▼プロローグ

創業50年、不動産大手のジーエムカンパニー。不動産のことなら建築から賃貸、売買物件の紹介はもちろん、業務用システムまでなんでも運営する東証一部上場企業だ。

そして私、今村アカリはそんなジーエムカンパニーで不動産広告の管理を行う「情報審査室」で働くいまをときめく(?)OLなのだ。新卒でジーエムカンパニーに入社して今年で2年目。なんだか堅そうな場所に配属されたと不安になっていたが、数ヶ月が経った今では、そんな心配は杞憂であったことがわかる。

それもこれも、情報審査の長池室長と、営業部長の荒林さんのおかげだ。2人は旧知の仲らしく、性別を超えた友情で結ばれているらしい。

荒林さんは女性らしさはもちろん気丈さも備えたバリバリのビジネスパーソンでありながら、2人の子供を育てる家族想いのお母さんでもある。

一方の長池室長はというと、一見静かそうに見えるが、中身は正義の心に満ち、勉学に熱心な姿は齢三十二歳にして「不動産情報の番人」的な存在だ。デスクには使い古された六法全書と宅建業の本が置かれ、不動産広告はもちろん不動産業界では広告表示の健全化の立役者としてセミナーやイベントでも登壇する機会の多い有識者だ。

そんな2人がたまたまフリースペースでお昼を食べているところにご一緒させてもらってからというもの、なぜか毎日宅を囲ってランチをするようになった。おかげで社内に気のおける友人が1人もいない私にも、世間話をする場ができたのだった。

2人の視座の高い「おしゃべり」のおかげで、私はたのしくランチタイムを過ごしながら、情報審査のこと、会社のことを聞いたり、仕事の悩みなどを解決したりすることができるのだった。

今日もいつものようにランチを食べ終わり、コーヒーを飲んでいた。そのとき、事件が起きた。

突然、奥の会議室から甲高い悲鳴が飛んできた。

「キャーーー!」

「どうした? 虫でもいたか?」真っ先に(男勝りの口調で)反応したのは荒林さんだった。コーヒーを一気に飲み干し、わらわらと群がる人波をかき分けて会議室の方へ向かう荒林さん。

私と長池室長も釣られてコーヒーを飲み、後を追う。会議室に着いた途端、荒林さんは急に足を止める。すぐ後ろを追っていた私と長池室長は玉突き状態になってしまった。

「急に止まらないでくださいよ。荒林さん。どうしたんですか?」

そう言いつつ、荒林さんの背中を超えて前を覗き込むと、そこには血まみれの包丁を持った男と、倒れこむ花村先輩の姿があった。

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