第1章2話|保険探偵ホームズ〜100%推理を外さない名探偵〜

小説

私の名前は長池 正和。生家は埼玉は草加市。正和という名前は正義心と平和の心を忘れるなという警察の父親の想いから付けられた。

ジーエムカンパニーに新卒で入社して以来幾つも困難はあったが、荒林さんとの出会いもあり、社内での荒波はなんとか乗り越えることが出来た。プライベートでも、取引先で知り合った妻と2人の娘に恵まれて、大成功とまでは言わないが、十分幸せな生活を送っている。

今日は、いつもどおり荒林さんとアカリくんと3人で昼ごはんを食べていた。すこし淡白だが十分満足できるオフィスのコーヒーを飲みながら、午後の仕事への活力を補充するべく、談話していたとき、奥から悲鳴が聞こえてきた。

何事だ? 

嫌な予感がする…。荒林さんが悲鳴の方に進んでいく姿を慌てて後を追うとそこには、会議室一面に広がる血の海があった…。

やばい…

これはやばい。やばい! 絶対やばいって! まだ死にたくない! 「何歳になったら死とか怖くなくなるのかな?」とかちょうどさっき話していたけど、やっぱり怖い! 嫁もだけど、娘超かわいいから。娘残して死ぬなんて無いから。少なくとも、2人が成人するまでは絶対死ねないから…どうする!?

いや…待てよ。

最近漫画で読んだぞ。こういう時に真っ先に死ぬやつは、間違いなく妙に慌ててる脇役だ。いまこの状況でいうと、おれが一番危ない。

落ち着け、落ち着け…。心の中でそう唱えつつ、目を閉じて深呼吸をする。頭がスッキリしてきた。

まずは状況を把握しよう。死なないために、まず荒林さんの指示どおり警察に電話をしよう。その次に犯人の確保と、けが人の救護、あとは現場の保存だ。

とりあえず警察に電話をかけながら、警備員と救急車の手配を近くにいた事務員の長谷川さんに頼んだ。荒林さんが犯人と思しき男との交渉をしているが、男は見たところ戦意のようなものはなさそうだ。包丁を持っている手も震えている。年齢は約50歳、会社に雇われている掃除員のようだ。一週間前くらいから会社で見るが、掃除には慣れているようだし、身なりもきちんとしている印象の悪くない男だ。

警察を呼んだところで、荒林さんと警備員が男を落ち着かせて包丁を置かせたところを、警備員とともに抑え込むのを手伝った。

男は暴れることはなく、ただただ「おれじゃない…違う…」とボヤいていた。

状況的には明らかに怪しい男だが…本当に犯人なのか? この男、ひ弱そうに見えたが体つきは意外とがっしりしている。大暴れしたら私と警備員の2人では骨が折れるような筋肉だ。なぜ抵抗しない? 計画的な犯行だったなら、何故ここまで動揺している? 包丁も男も血まみれではあるが、帰り血を浴びたような跡はない……あるいは、本当に犯人ではないのか?

考えているうちに警察が到着した。男を引き渡し、部屋の中にいた私と荒林さん、会議室周辺にいた社員たちはその場に残るように言い渡された。

警察が来たからにはもう安心か…。いや、しかし万が一もある。やるしかないか…。

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