黒豆煎餅は、岩塚じゃなきゃだめなんだ!!|こだわりの煎餅物語――長堀シネマズ#4

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「黒豆煎餅は、岩塚じゃなきゃだめなんだ!!」(???氏)

東京都内某所、スーツ姿の男が大勢集まる会議室で、ある男の怒号が響く。若い連中は、やれやれまた始まったよと言わんばかりに下を向く。中堅、ベテラン勢はチワワのような表情をしながら首を縦に振り続ける動きで、共感してる風を装っている。

シニアな連中が首ふり人形のように共感を装う理由は、怒号の主が創業50年の歴史を持つお菓子メーカー「株式会社長堀製菓」の会長、長堀氏だからだ。

実は、長堀会長はすでに現場を退いているのだが、週に一度の定期会議には顔を出し、今回のとおり黒豆煎餅について語り出し、そして終いには叫ぶ。

普段温和な会長が、青筋を立てて叫ぶ様子を初めて見たときは驚いた。あんなに優しい人なのに…。

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と、いうところで目を覚ます。どうやら夢を見ていたようだ。

ぼくは都内にある、創業30年、社員130人の会社で働くふつうのサラリーマンだ。入社した直後に知り合った一回り上で、ある部署の責任者を務める長堀氏は普段は温和で控えめな性格にも関わらず、お菓子には一生懸命で、真剣に語るのが印象的な人だ。特に「岩塚製菓の黒豆煎餅」にだけはかなり本気(マジ)で入れ込んでいるようで、しきりに「他のメーカーはだめなんだよ。ちょっと甘かったりするんだよね」と、岩塚製菓の回し者かと言わんばかりに他のメーカーの黒豆煎餅を批判する。

まだ30代前半の長堀氏が、そもそもなぜ黒豆煎餅を好んで食べるようになったのか? それを本人に聞くとこう語る。

「お菓子が好きなんですよ、ぼく。失敗はしたくないけど、やっぱり毎日ポテチだと飽きてくるんです。

そういう状態でいつものスーパーに行くと、不意に岩塚製菓の黒豆煎餅の黒豆と目が合ったんです。高すぎない価格設定に、塩っ気のありそうな白っぽい色。スナックらしい見た目の黒豆煎餅につい惹かれて買ったら、あっという間に一袋完食ですよ。それ以来、ぼくは岩塚製菓の黒豆煎餅の虜なんです。シャクシャクした食感に、黒豆のポリポリがマッチしていてスナックらしさと煎餅らしさのいいとこ取りなんですよ。

岩塚ァ…」(長堀会長)

好きなものや夢中になれるものがある人生は、時には怒号を飛ばしてでも信念を貫く強さを与えてくれる。そして、その方が人生がきっと豊かになるということを、長堀氏は伝えようとしてくれていたのかもしれない。

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この時の長堀氏の姿を見て、つながりのある映画を考えていた。思い出したのは、細田守監督のアニメ映画「サマーウォーズ」だった。

サマーウォーズは一夏の物語。主人公は少し頼りない高校生の小磯健二。腕力はないが、数学オリンピックの候補者という数学の実力者。

一見頼りなさそうに見える彼が、いざ世界がピンチになった時に信念を捨てず、数学を武器に立ち上がる姿には、長堀氏が黒豆煎餅をはじめ、お菓子に対する情熱を露わにする瞬間にどこか似ている気がした。

あの丘の向こうに
僕らの夏がある
変わらないもの
美しいもの
すべてそこにある

太陽の行方を
向日葵が追いかける
風の音さえ
聞こえないほど
僕らは見つめ合う

心と心を重ねて
光の滴で満たして
手と手を固く結んだら
小さな奇跡が生まれる

(山下達郎ー「僕らの夏の夢」)

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サラリーマンねこです。 映画、アニメ、ジブリ、オードリー、日向坂、街、暮らしなどについて書いています。

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